環境DNAとは
環境DNAとは、土壌や水などの環境中に存在する生物由来のDNAのことを指します。これは、生物が排泄物、粘液、剥がれ落ちた皮膚や体毛、死体などを通じて環境中に放出したDNAが蓄積したものです。
環境DNAの特徴
- 環境サンプル(土、海水、河川、湖沼など)から直接採取できる
- 生物を捕獲せずに、その環境に生息する種を特定できる
- 絶滅危惧種や外来生物の分布把握にも有効
環境DNAを解析するメリット
- 非侵襲的調査: 対象種を捕獲する必要がなく、環境への影響を最小限に抑えられる
- 効率的: 採水のみで広範囲の調査が可能
- 多様性把握: 環境中の生物種を網羅的に特定できる
主な環境DNAの解析手法
- 種特異的解析: 特定の生物種の存在や量を調べる(リアルタイムPCRなど)
- 網羅的解析: 環境中の多様な生物種を同時に調査する(メタバーコーディングなど)
環境DNAを解析する流れ、手順
環境DNAを解析するための具体的な手順は以下の6ステップです。
1. サンプリング
- 河川、湖沼、海などの水環境から100mL〜1000mLの水を採取します。
- 採水時は汚染を防ぐため、手袋の着用などの注意が必要です。
2. フィルタリング
- 採取した水をフィルターに通し、環境DNAを含む粒子を集めます。
- 一般的に孔径0.45μmのフィルターが使用されます。
3. DNA抽出
- フィルター上に集められた粒子からDNAを抽出します。
- 市販のDNA抽出キットを使用するのが一般的です。
4. PCR増幅
抽出したDNAを用いてPCR増幅を行い、主に以下の2つの方法があります。
- 種特異的解析(リアルタイムPCR)
・特定の生物種のDNAを検出・定量します。
・対象種に特異的なプライマーとプローブを設計します。 - 網羅的解析(メタバーコーディング)
・環境中の多様な生物種を同時に調査します。
・魚類、哺乳類、鳥類などの分類群ごとに設計されたユニバーサルプライマーを使用します。
5. シーケンシング(メタバーコーディングの場合)
次世代シーケンサーを用いてDNA配列を決定します。
6. データ解析
- 得られたDNA配列データを解析し、生物種の同定や量的評価を行います。
- バイオインフォマティクスツールを使用して配列データを処理します。
環境DNA技術は、生態学、保全生物学、古生物学など様々な分野で活用されており、生物多様性の把握や環境モニタリングに革新をもたらしています。
環境DNAを解析するための必要な設備や道具
環境DNAを解析するために必要な主な設備や道具は以下の通りです。
サンプリング用具
- 滅菌済みの採水容器(100mL〜1000mL)
- 手袋
- クーラーボックス(サンプル保存用)
フィルタリング装置
- フィルターホルダー
- 真空ポンプ
- フィルター(一般的に孔径0.45μm)
DNA抽出・PCR用機器
- クリーンベンチ
- 遠心分離機
- ボルテックスミキサー
- ピペット(各種サイズ)
- サーマルサイクラー(PCR装置)
分析機器
- リアルタイムPCR装置(種特異的解析用)
- 次世代シーケンサー(メタバーコーディング用)
その他の消耗品
- DNase・RNaseフリーの試薬類
- PCRチューブ
- フィルター用ピンセット
- DNA抽出キット
- PCR試薬(プライマー、酵素など)
データ解析用コンピューター
- 高性能PC(大量のシーケンスデータ処理用)
環境DNA解析では、コンタミネーションを防ぐために清浄な実験環境を維持することが重要です。そのため、専用の実験室やクリーンベンチの使用が推奨されます。また、サンプリングから解析までの各段階で適切な機器や消耗品を使用することで、信頼性の高い結果を得ることができます。
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